【タイトル】

コピス・トライアングル

【本文】

 校庭の北東端には小さな雑木林があります。その土地の形通り、三角森とか三角林などと呼ばれています。           一歩足を踏み入れると、ちょっとした深山幽谷の趣、トレッキングでもしているような気分にもなれそうです。以前は木々の葉が生い茂り、陽の光も届かず荒れていたようですが、間伐や手入れをした結果、下草も生えて雑木林らしい雰囲気になってきたとのことです。今は木々の間に菜の花も育っています。              明治時代の文豪である国木田独歩はその代表的作品『武蔵野』の一節で、  「林はじつに今の武蔵野の特色といってもよい。すなわち木はおもに楢の類いで冬はことごとく落葉し、春は滴るばかりの新緑萌出ずるその変化が秩父嶺以東十数里の野いっせいに行なわれて、春夏秋冬を通じ霞に雨に月に風に霧に時雨に雪に、緑蔭に紅葉に、さまざまの光景を呈するその妙は云々…。」 と、武蔵野の象徴的な“林”の光景を描いています。三角森はわずかな面積ですが、独歩の世界観を垣間見ることのできる場所となっています。  また、“雑木林”は英訳すると、“coppice:コピス” や “copse:コプス” となります。三角森を今風に表現すれば、コピス・トライアングル、コプス・トライアングルとでもなるでしょうか。   三角森の木々は、校庭を走る生徒たちを静かに見守りながら、悠久の時を刻んでいます。    


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